音が持つ「声」
  
  音には表情があります。人の声を聞けばよく分かりますよね。
  楽しそうな声、悲しそうな声、絞り出すような辛い声。
  それは声質にかかわらず、聞けば分かるものですよね。
  音にもそれがあると私は思っています。

  ピアノのドの鍵盤をぽんと押した時に出てくる音は、
  「ピアノのドの音」である、ただそれだけのものでしかありませんが
  「旋律」の中に組み込まれた時にそれは表情を持ちます。

  たくさんの音が集まって集団の表情を出すこともあれば
  たった一つの音がとても広がりを持って語りかけてくることもあります。
  切なそうな、怒りを持った、とぼけたような、あるいは楽しそうな。
  「音楽」の中の「音」は一つ一つがとても雄弁です。
  (「休符」も雄弁です。いわゆる「間」ですね。「無言」も「雄弁」の一種なんですよね)

  MIDIを作っていると、その表情付けに苦労します。
  たとえば、楽譜にデクレッシェンド(段々弱くすることです)がかかっているから、と
  ヴェロシティを絞っていく。ここはフォルテだから強くする。
  それだけじゃダメなんです。それだけでは音楽にはらない。

  それだけだと「ただの音が強くなったり弱くなったりしている」だけにしか
  聞こえません。そこから伝わってくるのは「音が段々弱くなってる」とか
  「音が強くなった」という情報のみです。

  うまくできた時はそこに「意味」が加算されると思うんですね。
  ただ弱くなっていってるんじゃない。遠くに過ぎ去っていくために弱くなっているのか、
  気分がすっと落ち込んで弱くなっているのか、
  ひそひそと内緒話を始めようとして弱くなっているのか、
  自信をなくして弱くなっているのか、こっそり誰かを驚かせようとして弱くなっているのか。

  「音が小さくなる」の中に内包される「意味」というのは無限にあると思うんですね。
  それが、表現できているかどうか。そのあたりがとても大切なんだろうと思います。

  もっともこれらは言葉にして感じられるものではなく、直感的に、感覚的に
  伝わって来るものだとも思います。
  音楽を聴いていていちいち「ここは内緒話、あ、ばれてみんなで大笑いしてる」とか考えて
  聞いているわけではないですよね(笑)
  聞き終えてゆっくり考えて言葉にしてみれば、そう言うことかな?と言うだけで。
  それも、聞き手によって微妙に代わってくるとも思うし。

  でも、なにも「意味」を持たない音からはなにも感じられないのだと思います。

  「意味」のある音…「声」を持つ音を作りたい。それらを並べて音楽を作っていきたい。
  楽譜からその音が持つ意味を読みとり、それを実際に声を持つ音として鳴らしていきたい。
  いつもそう思っています。…なかなかうまくできないんですけどね(^^;)
  出来たと思っても、数ヶ月、数年時間をおいて聞くと、ええ…?何これ、と思ったり。

  まあ、そんな風に四苦八苦しながら、今日もMIDIを打ち込んでおります。
 
  (09/16/2002 saya)

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